棚田写真家宣言


 

最近、日本全国の棚田では、撮影に訪れるカメラマン、写 真家たちの迷惑行為に、頭を悩ませているところがあります。たくさんの人が訪れて関心を持たれることは、棚田保全に一役買っているという面もありますが、 ある棚田では、「写 真家公害」といわれるほどひどいものだそうです。私も写真を撮るひとりとして、責任がないとは言えません。

今から数年前、棚田をまわり始めたころは、農道のまん中に車を停めて叱られたことや、畦道を歩い て崩してしまい、直したこともあります。その後、農家の人にお茶や食事をごちそうになったり、話を聞いたりしながら、「棚田撮影の常識」みたいなものを、現場で徐々に教わってきたように思います。私も、前よりはマシな写 真家になったと思います。

行儀のよいカメラマンもちゃんといます。ただ、悲しいことですが、常識をわきまえないカメラマンが多いのも事実です。立派な会社の社長さんが、カメラを持った途端に、非常識人 間になってしまうという例もあります。 カメラを手にすると、特権意識を持つ人がまだいるようです。でも、誰でもが写 真を撮れる時代なんです。そういう意識を持つのは、もう古いことでしょう。

棚田は「観光地」ではなく、農作業の現場です。地元の人が不快に感じたら、この美しい棚田を維持しようという気力を萎えさせてしまいます。私たちカメラマン、写 真家の常識ある行動が、棚田の維持、保存にも一役買うことを肝に命じなくてはなりません。「そんなこと、あんたに言われなくてもわかってる」と言う人もいるでしょう。そういう人は問題ありません。ただ、言われないとわからない人が実際いるので、そういう人にわかってほしいだけです。かく言う私自身、前にも書いたように、以前は、非常識人間だったので。

ただ、あまり神経質になり、「美しい」ものを美しく感じなくなっては元も子もありません。農家の人たちも、「うちの田んぼ、きれいに撮ってや」と言ってくれます。農家の人たちは、カメラマンを敵視しているわけではありません。(カメラマンではない、普通 の観光客も、非常識な人はいるし) むしろ、マナーのいい写真家、カメラマンは歓迎されています。要するに、一般 的な 常識さえ持てばいいことでしょう。

プロカメラマン英伸三さんら4人が呼びかけ人代表を務め、NPO法人・棚田ネットワークがまとめた、この「棚田写真家宣言」の看板が、全国の何ケ所かの棚田に立てられることになりました。本来なら、農家の人たちも、こういう看板を立てるのは本意ではないのですが、でも、あまりにもひどいところがあるので、仕方のないことでしょう。

そこで、当「オリザ館」でも、カメラマン、写真家自らが、撮影マナーに対する意識を高めないといけないと思い、この趣旨に賛同し、「棚田写 真家宣言」をすることにしました。棚田の写真を掲載しているカメラマン、写 真家のみなさんも、ぜひ、この宣言文を、掲載していただけないでしょうか。もちろん、みなさんの事情があるでしょうから、無理強いするつもりはありません。

写真家 青柳健二


このバナ−をクリックすると、NPO法人棚田ネットワークの宣言文ページが表示されます。
わざわざ宣言文のページを作るのは面倒だという方は、
このように、バナ−のリンク先を以下のページに指定してください。
http://www.tanada.or.jp/senngen.htm

 

棚田写真家宣言

 私たちは、美しい棚田を守り続けた農家の方々のたゆまぬ 労働に心から敬意を払います。 そして棚田の撮影にあたり、次のことをお約束します。

◇地元の人たちに「こんにちは」と挨拶します。

◇棚田の生命線である畦や水路への立ち入りは、なるべく許可をいただくようにし、決して踏み崩さないよう注意します。

◇棚田が生産現場であることを深く心に留め、農作業の邪魔になるようなことは致しません。

◇写真撮影を優先させるあまり、農機具などを勝手に移動させたり、農家の方にモデルとしてのポーズを強要するような、無礼なことはしません。


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