9月17日、月曜日、晴れ
世界中、キナ臭さが漂い始めています。日本だって、対岸の火事ではすまされません。もうすでに、日本人も犠牲になっています。
テロ事件の第一報を知ったのは、ニュースステーションを見ているときでした。ニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだというものでした。それを見たとき「ずいぶん珍しい事故だな」と思いました。そして香港の昔のカイタック空港を思い出しました。
ビルすれすれに飛行機が離着陸していた香港では、いつかビルに突っ込む事故が起きてしまうのではないか、起きても不思議ではないと誰もが思っていたほどです。意外にも、そういう悲劇的な事故は起こらず、数年前には、香港も新しい空港ができて、アクロバット的な着陸はもう体験できなくなりましたが。
なので、昔の香港なら、事故のニュースを見たら「ああ、やっぱりな」と思ったでしょうが、マンハッタンの上も飛行機が飛んでいたのかと思い、もっと意外な気がしたのでした。でも、その十数分後、2機目がぶつかって、こんな偶然が起こるはずがないと、この事故、いや事件の異常さに気がついたのでした。
飛行機がビルに突っ込むことだけでも、信じられないのに、そのふたつのビルが、わずかの時間で倒壊してしまったことは、もっと信じられないできごとでした。アメリカの繁栄を象徴するようなビルが、あとかたもなく崩れ去ったことは、俺たちが住んでいるこの資本主義世界の脆さも象徴しているようで、ゾッとさせられました。
平和な社会が、突然崩れることは、テロだけではなくて、日本では、自然災害として、いやというほど体験しています。にもかかわらず、直接自分の身に降り掛からないと、なかなかそれを感覚的に理解することはできません。「俺だけは大丈夫」とつい思ってしまいます。
このテロ事件の行方とアメリカの出方、日本の出方が気になります。それと、戦争が好きな人たちというのがいるらしく、最近彼らの声が大きくなってきているのも気になります。
日本はどうなっていくんだろう、そういう漠然とした黒雲のようなものが目の前にかかってしまったような気分です。その黒雲が切れたとき、目の前に現れる世界は、地獄なのか天国なのか。いずれにしても、黒雲は突然に切れるものです。気をつけなければならないのは、悪意を持った人間は、黒雲によってものの本性・本質を隠そうとします。
黒雲が切れ、目前の事態にみんなが気がついたときには、もうあともどりができないという有り様にならないように、みんなで、黒雲の先を見通 すことに神経を尖らせておかないといけない時代に突入したことだけは、間違いないようです。
青柳
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